クラウドの行方 10/08/02 (by picolab)

IT業界ではクラウドという言葉が氾濫していますが、今はまだ、データセンタを仮想化して時間やリソース単位で切り売りしやすくしようという程度の話が多いようです。サーバーのコンピューティングパワーやストレージの切り売りから始まった「クラウド」が、単なるコスト削減競争でなく、何か本当に新しい価値を提供できるようになるのかどうかはまだわかりませんが、私自身は、その鍵が既存のコミュニケーションメディアである「電話」や「テレビ」にあるのではないかと思っています。

「電話」や「テレビ」は、利用者に合わせて高度に仮想化(ブラックボックス化)された道具だと思います。最近は、高機能化が進んで必ずしも仮想化がうまくいっていない製品もありますが、コンピュータに比べれば遥かに仮想化度合いが高いと思います。私の中では、「クラウド=並列分散処理+仮想化」なのですが、仮想化の面から見れば、クラウドとは「コンピュータが電話やテレビに近づく」(あるいは「電話やテレビがコンピュータに近づく」)こと、という説明が私のイメージには合います。

技術的に見れば、クラウドは、サーバ(データセンタ)だけでなく、ネットワーク(データセンタ間)や、さらにその先の端末(や利用者)を含む仮想化へと広がっていくと思います。企業システムで(プライベート)クラウドを活用しようとする時に気になる信頼性やセキュリティだけでなく、一般の利用者から見た(パブリック)クラウドの性能等についても、実際にはサーバだけでなくネットワークや端末まで含めてサービスレベルを考える必要があります。つまり、データセンタ+ネットワーク+端末によって、「並列分散処理」をどのように効率良く実現し、「仮想化」によってそれをどのように使いやすく提供していくのか、ということがこれからのクラウドの技術的課題になります。

また、ビジネス的に見れば、仮想化(&標準化)によって水平分業モデルの進展がさらに加速すると同時に、垂直統合型の新たなビジネスの創造もより容易になると思っています。企業を含む利用者から見れば、特定のデータセンタ(やネットワークや端末)にロックインされないためのクラウドという選択も容易になると思いますし、それは同時に、先駆的なビジネス領域でサーバ(データセンタ)+ネットワーク+端末を組合せて高度なブラックボックス型のサービスを安く早く提供しやすくなる(コンシューマー向けの新たなサービスの試験提供&大規模化が容易になる)ことも意味します。既存の電話やテレビ(やインターネット上の各種メディア)の課金モデルやビジネスモデルは、こういったこれからのクラウドビジネスを考えていく上で参考になるはずです。

近未来(ここ2-3年)の技術面の話としては、端末側ではHTML5等によるインタフェイスの標準化、サーバ側ではマルチコア(&ヘテロジニアスマルチコア)CPUやGPU等を活用した並列分散処理のアルゴリズムや開発/実行環境等、サーバ+ネットワークの面ではKVS(Key Value Store)等を活用した分散ストレージの活用/標準化が面白そうです。これらを束ねて使いやすく仮想化できればその付加価値は非常に大きいとはいえ、技術的にはまだまだこれからなので、実際に役立つレベルになるまで気長に取り組んでいく必要はありそうです(その頃には「クラウド」という言葉もまた別のキーワードに置き換わっていると思いますが)。

ということで、詳しい話は、ぜひまたの機会に!

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