価値観とコミュニケーション特性 14/02/16 (by picolab)

コミュニケーションの意味を情報の非対称性解消の観点から考えると、情報の客観的価値と主観的価値の違いによってコミュニケーションの動機付けにも違いが生じる可能性が高くなる。このメカニズムについて、少し考察してみることにする。

ここでは、コミュニケーションのコストと効果について、それぞれ客観的および主観的な尺度を考えてみる。もちろん、主観的な尺度は個々人に属するため、単純に全体で総和を取ることは難しいかもしれないが、ここでは何らかの正規化を行うことにより数値化して、意味のある総和を考えることができるとし、その総和としてのコストパフォーマンスを最大化することが主観的なコミュニケーションの「社会的な」最適化であると考える。これに対し、主観的なコミュニケーションの「主観的な」最適化は、あくまでもその個人の主観的な尺度に基づくコストパフォーマンスの最適化となり、最適化の解は人によって異なることになる。これらの客観的尺度と主観的尺度の違いや社会的最適化や主観的最適化の違いによって生じるコミュニケーションの動機付けの違いについて考えてみたい。

コミュニケーションの客観的コストには、例えば所要時間のようなものがあり、主観的コストには、例えば面倒臭さのようなものがある。時間排他性(コミュニケーションのタイミングが相手に拘束され他のことができない度合)のように、客観的側面と主観的側面の両方が考えられるものもある。コスト面は、主にコミュニケーション手段の選択に関わる動機付けに影響を与え、例えば、電話・メール・SNS、あるいは直接会って話をする、といったコミュニケーション手段の客観的効率や主観的好みによって特徴付けや分類が可能だと考えられる。

コミュニケーションの客観的効果としては、その情報自体の客観性が高い場合には、主に情報の非対称性の解消が考えられる。つまり、一方しか知らない情報を交換する場合には効果が高いが、お互いに知っている情報を交換しても効果は低い。ただ、情報自体の主観性が高い場合、単に情報の非対称性を解消するだけでは、自分が相手に与えた情報の相手の主観的尺度での価値が自分にとっての価値と同じとは言えず、コミュニケーションの客観的価値が生じているとは言い切れない。主観的情報には、詐欺のように、相手を騙すために客観的情報であるかのように意図的に偽ったものもあれば、好き嫌いのように、意図的に偽るつもりはなくても相手には必ずしも自分と同じ意味を持つとは限らないものもあるが、ここでは第三者的に(例えば多数決等により)真偽を検証可能でない情報を主観的情報とし、そのような主観的情報を中心とした情報交換による効果をコミュニケーションの主観的効果と考える。

コミュニケーションの主観的効果の主要素としては「共感」が挙げられる。対象情報の自分と相手の主観的な評価尺度が近い場合には、コミュニケーション効果も客観的情報と同様に情報の非対称性解消度合に応じて決まることになるが、自分と相手の間に共通の主観的な評価尺度が未だ無い場合、情報の非対称性解消だけでは効果が無く、効果を上げるためにまず自分と相手で似通った主観的な評価尺度の発見や構築が必要となる。そこで重要な役割を果たすのが「共感」だといえる。

効果面からコミュニケーションを考えると、客観的には自分の知らない情報を持っている相手とのコミュニケーションに価値があり、主観的には自分と共感できる(主観的評価尺度が似ている)相手とのコミュニケーションに価値があるといえる。つまり、効果面からは、コミュニケーション対象情報に応じてコミュニケーション相手の知識や共感性によって特徴付けや分類が可能だと考えられる。

以前に、SNSの「目的別進化」について考えたが、このコスト・効果、客観・主観のマトリックスによりコミュニケーションの手段や相手を分類してコミュニケーションの比較的単純な動機モデルを作ることが可能で、低コストの観点からは「同じコミュニケーション手段を得意/好みとするグループ」に基づくコミュニケーション手段の進化を説明でき、高効果の観点からは「知識人/共感相手のグループ」の進化を説明できる。これにより、知識や共感の対象領域や共有手段、共有相手を目的に応じて絞込む形でのSNSの進化についても、その具体例として検討が可能となる。コミュニケーションの進化は、客観的尺度と主観的尺度の両面からの改善の結果として、客観的尺度と主観的尺度の違いを吸収する方向に進んでいくと考えられる。

そのようなコミュニケーションの進化においては、特に、主観的尺度に基づくコミュニケーションを主観的な最適化ではなく社会的な最適化に向けてドライブする何らかのメカニズムが重要な役割を果たすようになる。コミュニケーションの動機付けモデルに、情報交換によって生じる価値の対価としての「情報貸借り尺度」(仮想通貨)を組込むことによって、客観的尺度と主観的尺度の違いを明示的に表現できるようにし、さらに個々人の主観的最適化の違いを仮想通貨交換によって正規化・平準化して社会的最適化に近付けられるようにすれば、価値尺度と交換社会の関係ををさらに具体的に考察できるようになるのでは、と期待している。

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